
どうもライフハック大好き人間の飛永(@chiritsumo_blog)です。
もくじ
いやな気分にさようならするために
- 作者:デビッド・D・バーンズ
- 発売日: 2013/07/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
もともとは心理的・メンタルの問題を解決するための認知行動療法を紹介する本です。
「うつ病」のバイブルと言われている。抑うつを改善し、気分をコントロールするための認知療法を紹介する。
『いやな気分よ、さようなら コンパクト版』より引用
うつ病とは書かれているが、そこまでのレベルではなく最近気分が滅入ることがあるなあというレベルの人にも有効な内容が書いてあります。
430ページものある大作なのでなかなか手を出すのが億劫で、ずっと埃をかぶらせてしまっていたのですが、このコロナの流行をきっかけに手をだして、すべて読み通しました。
世界や生活がどんどんアンコントローラブルになっていくとつくづく思います。
以前は、生活とそれに影響を受ける自分をアクションをとることによって、コントロールしやすかったですよね。
もっといろいろ楽しい選択肢があって、何か悪いことがあったときも、さまざまな対応策をとれましたが、今は、外出が禁じられてただずっと家に自分という存在がいるというか。
画面を通して知る悲しいニュースと8畳の中で起こる出来事が世界のすべてになってしまい、できることの振れ幅が一気に縮まったように感じます。
世界や日本でもコロナ鬱やコロナによって気分が滅入っている人は多そうです。
だから、何が起きるか予測のつかない世界で何が起ころうと自分の気持ちを整理できる自分でありたい、そう思ってこの「いやな気分よさようなら」を読破しました。
認知の歪みが感情の歪みにつながる
この「いやな気分よさようなら」、人生ベスト10に入るくらい良い本でした。
まず認知行動療法とは
感情は出来事ではなく認知が規定する
という前提を元に、認知を健全なものにしていくという療法です。
なんとなく出来事が感情を規定するというイメージを持ちがちじゃないですか。
クビになる(出来事)→すなわち悲しい、憤り(感情)というのは想像しやすいですよね。
でも、認知行動療法はこれに異議をとなえます。
いやいや、あなたのまわりに起きる出来事があなたの感情に直接影響を与えるのではありません。
あなたの認知、つまりあなたが出来事にどのような考えを持つかがあなたの感情に影響を与えるのだと。
だからクビになるというある程度破壊的な出来事があって、破壊的な感情になったとして、裏に潜んでいる破壊的で誤った認知(俺はこれから一生一文無しなんだ、やクビになるなんて俺はなんてダメな人間だ)を健全で妥当な認知(自分の専門性を持ってしたら3ヶ月以内に職は見つかるだろう)などに切り替えていくことで、感情を健全なものにしていくことを目指すものなのです。
認知の歪みの10類型
「いやな気分よさようなら」で出てくるかなり重要な概念に認知の歪みの10類型があります。
本によればあらゆる破壊的・破滅的な認知は、以下の10つのどれか、または複数に該当するそうです。
(以下引用はすべて『いやな気分よ、さようなら コンパクト版』より)
1.全か無か思考
ものごとを白か黒のどちらかで考える思考法。少しでもミスがあれば、完全な失敗と考えてしまう。
「あんなに勉強したのに1問間違えてしまってもうダメです」と考えるようなもの。仮に1問間違えたとしても点数は96点だし評価はAだ。完全なものは世の中にはなく、もし完全ではない=ダメという認知をとるならば、常に自分を破滅的な感情に置くことになってしまいます。
2.一般化のしすぎ
たった1つの良くない出来事があると、世の中のすべてこれだ、と考える
楽しみにしていた宅配便が指定日に届かなかったときに「毎回スケジュールどおりに来ないじゃないか!」と考えてイライラするようなもの。実際はスケジュールどおりに来ることが多いが、忘れてしまっている。
3.心のフィルター
たった1つの良くないことにこだわって、そればかりくよくよ考え、現実を見る目が暗くなってしまう。
「仕事で犯したミスが気になって、土日に全く楽しいことがなかった」というような認知。実際は土曜に行った寿司は非常に美味かったし、日曜に行った美容院では自分好みの髪型になった、というような楽しいこと幸せなことはあったはずなのに、1つの良くない出来事が気になってそれらが見えなくなってしまう。
4.マイナス化思考
なぜか良い出来事を無視してしまうので、日々の生活がすべてマイナスになってしまう
「〇〇さんが私を褒めてくれたけど、あの人は誰に対しても優しいから実際は思っていないに違いない」というような認知。この調子で生活におこるプラスの出来事をマイナスに転換してしまう。
5.結論の飛躍
根拠もないのに悲観的な結論を出してしまう
5-a心の読みすぎ
ある人があなたに悪く反応したと早合点してしまう
「上司に提出した資料のフォントサイズがバラバラだった。適当な人だと思われたに違いない」上司はその事実に気づいていなかったりする。気づいていても取るに足りない細部は無視して、論理だった内容を高く評価してくれているかもしれない。
5-b先読みの誤り
事態は確実に悪くなる、と決めつける
「結婚する意志があるのに、これからも結婚できないに違いない」未来のことは誰にもわからない。事実これからも結婚ができなかったとしても、起こるかわからない出来事を悲しむ必要はない。
6.拡大解釈(破滅化)と過小評価
自分の失敗を過大に考え、長所を過小評価する。逆に他人の成功を過大に評価し、他人の欠点を見逃す
「お金がないばっかりに子どもに良い経験をさせてあげられていない。なんて悪い親なんだ」毎日3食の温かい食事を一緒に楽しく摂り、安心して眠れるベッドで大好きな絵本を欠かさず読み聞かせしているという素晴らしい行動を忘れてしまっている。
7.感情的決めつけ
自分の憂うつな感情は現実をリアルに反映している、と考える。
このコロナの状況で「私は世界がどんどん悪い方向に行くのではないかと心配で、気が滅入っている。だからきっと世界が悪い方向に行くに違いない」と心配し、さらに滅入ること。実際、あなたの感情と世界の情勢は1mmも関係がない。
8.すべき思考
何かをやろうとするときに「~すべき」「~すべきでない」と考える。
「30分も待ち合わせに遅刻してくるなんて!許せない!」というような認知。確かに遅刻は良くない行為だが、起きてしまった事実にフラストレーションを感じ続ける必要はない。
9.レッテル貼り
極端な形の「一般化のしすぎ」である。ミスを犯したときに、どうミスを犯したかを考える代わりに自分にレッテルを貼ってしまう。
仕事でミスをして「なんて自分は無能なんだ」と考えるなどネガティブな自己イメージをつくってしまう。
冷静に考えてみると無能だと思う自分であっても、毎回の試行で成功したり成功しなかったりするわけで、自分が常に何も達成できない「無能」だと考えることは不合理だ。
10.個人化
何か良くないことが起こった時、自分に責任がないような場合にも自分のせいにしてしまう
生徒が宿題をやってこなかった時に、先生が「自分はなんてダメな教師なんだ」と考えるようなもの。
生徒に指示を出したり叱責して次に繋げることは教師の責務だとしても、生徒が宿題をやってこなかったこと自体に、先生に責任があるわけではなく気に病む必要もない。
いやな気分よさようならのトリプルカラム法を実践してみた
上記の認知の歪みの類型を活用したワークがトリプルカラム法です。
やり方は、左の列に自動思考(自己批判的)、真ん中の列にその思考がどの認知の歪みに該当するか、右の列に合理的な反応(自己擁護的)を書きます。
このプロセスによって、自分の認知(正しいと思い込んでいる)がどれだけ不合理でネガティブであるかと気づくことができるのです。
イメージはこんな感じです。

まず自動思考を書き出します。
「テレワークがまたしても延長されてしまった。これからずっと苦手なテレワークをしなければいけないので辛い」
その思考がどのような認知の歪みを元にしているかを書き出します。複数選んでも大丈夫です。
この例ならば、先読みのしすぎとマイナス化思考を選びました。
最後にその認知の歪みを取り払った時に得られる合理的・擁護的な反応を書きます。
「しばらくは続くかもしれないが、終わりはいつか来る。それに案外早く収束するかもしれない。それに苦手とか言っておきながら、毎日9時間しっかり働けているじゃないか」
こうして一行が完成します。
気分が滅入っている時にその原因となる認知を探す、というイメージでやるのがよいかと思います。
上記の認知の歪みを参照すれば誰でもできるので、身の回りの紙をひっぱってきてぜひやってみてほしいです。パッと気分がよくなるのを実感できるはずです。
トリプルカラム法を実践してみての感想
やってみての感想として、実際に一つ一つの認知を丁寧に検討できるので、実際に認知が変わりました。
たとえば「テレワークも実際は苦手でもない」という健全な認知に、切り替わったとまではいなくとも、近づくことができました。
また、実際に気分の向上もはっきりと実感できました。
自粛せずに帰省をした女性のニュースを見るたびになんだか心がモヤモヤして、そしてモヤモヤしてしまう自分にモヤモヤしていたのです。
だけどこのトリプルカラム法を実践したあとには「自分と女性には何の関係・影響もない」とわかり、関連するSNSポストを観ても何も思わず、自分のことに集中しようという健全な考え方を持つことができたと感じます。
セーフティネットを持つことの重要性
最初に書いたように、このアンコントローラブルな世界で、自分がコントロールできる唯一のもの=自分の認知をコントロールする能力の重要性は、これからますます高まっていくように思います。
自分以外に自分をケアしてくれる人は究極的にはいないんですよね。
そんな中で、上記のようなお手軽で効果的な手法を知り「自分がそれを持っていていつでも活用できる」という事実自体が、自分の心を癒やしてくれると気づきました。
このトリプルカラム法や認知の歪みの10類型以外にも、多くの実践的かつ効果的なコンセプトやワークが紹介されているので、自粛で気分がパッとしないなあという日が続く人は、ぜひこのいやな気分よさようならを読んでほしいと思います。